大千軒岳「知内川コース」 1072M
2000.6.10


[コースタイム]
  登山口 6:00→【60】→広い川原→【60】→金山番所跡→【90】→お花畑→【30】→大千軒岳10:00
  登山口13:20←【60】←広い川原←【40】←金山番所跡←【60】←お花畑←【20】←大千軒岳10:20

 今年の本格的な夏山、第一回目の挑戦である。 昨晩の帰宅が遅くなり、当然昨夜の就寝は、予定の十時を大きく過ぎてしまった。函館を午前四時に出発し、薄曇りで、時折小雨が降る中、函館山を左に眺めながら、知内を抜けて枝道へ入り、登山口への到着は、午前五時四十分であった。 途中、福島町の大千軒登山者休憩所に立ち寄ったが、団体の登山者が車を連ねて、登山の準備をしていた。 雨上がりで、新緑が眩しい登山口で、登山靴に履き替え、忘れ物がないか再度点検をして、確かめる。 天気は、福島に近づくに従って、好転し、時折青空が広がるようになってきた。 そこそこの天気の土曜だというのに、予想に反し登山口の駐車場には車が一台もなく、少々不安がよぎる。 北海道の山のメーリングメンバーの情報によると、北海道夏山ガイドに記載されている『丸太を組み合わせた橋』は、流されて無く、靴を脱いでの渡河となるという情報なので、少々心配である。 最後の、点検を終えて登山口出発午前六時

 まず、雨竜沼の登山口にかかる昔の橋以来の、久方ぶりに渡る吊り橋を慎重に渡るが、“高所恐怖症が少し入っている山屋”には、やはりお尻が少しムズムズしてしまう。 噂のとおり、所々針金がはずれているところがあり、しかも全体に渡り板が少し傾いている。 しばらくは、広い本流沿いの河原となり、さらに悪名高き「高巻き」「狭戸」を繰り返し、最初の難関を通過するが、やはりここでかなりの体力を消耗してしまう。 予想はしていたが、ここまで道の状態が良くないとは、思っていなかった。 とにかく、道幅が狭く危険な場所が多すぎて、肝を冷やす場所が多く、山道も雪崩で所々消滅しているところもあった。

 いよいよ、広い河原に到着したが、やはり『丸太を組み合わせた橋』は、影も形も無い状態で、しかも水量もかなり多い。 靴が濡れる覚悟で、浅いと場所を探し、渡河するが、やはり少し靴の中に水が入る。 さらにしばらく行くと川に行く手を阻まれるが、ガイドブックにある右手の道も見あたらない。 ここで、川を渡るなとあるが、川の向こうで赤いリボンが風に揺れて「おいでおいで」と呼んでいるし、ペンキの矢印も、呼んでいるので、あえて再度渡河するが、今度はけっこう靴に水が入り込んでしまった。 さらにしばらく行くと再度川が行く手を阻み、3回目の渡河を繰り返す。 帰り道で発見したのだが、ガイドブックに載っている道は微かに残っているが、増水で半ば水没状態であり、しかもその方向を示す赤ペンキもほとんど消えかかっていた。 

 その後、ようやく最初の目標となる白い十字架が出迎える 「金山番所跡」 へ到着する。 ここは、江戸時代に松前藩が106名の隠れキリシタンを処刑した場所として、有名だが、なぜわざわざこんな場所まで来て、「処刑」したのか、以前から不思議に思っている。

 川の水は雪解けが遅れている影響か、かなりの流量で、ときおりすごい音を立てて、ゴーゴーと流れている。 金山番所跡を過ぎ、「千軒銀座」に到着すると、沢の上流から一気に流れて来たと思われる、土砂と雪の大量の固まりに遭遇する。 付近を通過すると、下から冷気が上がってくる。 当然、登山道は消滅していて、遙か遠くに微かに見えている赤リボンをめがけて、雪の固まりの上を慎重に渡るが、いつ「ミシッ」と音がして下に落ちるかもしれないという恐怖が背筋を走る。 あとで、出会った仲の良さそうなご夫婦によると、例年春と秋に登山をしているが、こんな状態を見たのは初めてだとのこと。

 危険な雪渓をを通過し、最大の難所となるきつい登りが続く。 登っては、休み、さらに登っては休むという繰り返しが続き、この登りがいつまで続くのかという、マイナス思考に傾きかける。 もうすぐ、稜線というところで、かなり大規模な地滑りか、雪崩の跡に遭遇する。 かなり下まで、急な斜面がざっくりと続き、どうやら登山道を押し流してしまったようだ。 もし、足を滑らせたら下まで転落するのは間違いなく、完全に「オサラバ」となってしまうので、斜面に張り付いて、ナメクジ状態で何とか通過したが、このような状態の場所がさらに2カ所あった。 

 やがて、登りが少し緩くなり、待望のお花畑の稜線にたどり着く。 先週の、新聞記事のとおりシラネアオイの大群落と第二の白い十字架が疲れた体を励ますように迎えてくれる。 ここで、何枚かスライドを撮影し、その後やや急な最後の登りを経て、頂上に立つ。 頂上からは、津軽海峡を挟み本州の山並みがよく見える。 たぶん、岩木山であろう。頂上で、昼食を急いで取り、すぐに下山。

 しばらくぶりの本格的登山で、帰りはへろへろ状態となるが、水分を補給しながら、ようやく登山口着。 いやはや、吊り橋までが、長かったこと。 最後に、登山口の入山者名簿に下山時間を記入し、過去の記録を見ていたら、五月の末に登山口の車でビバークした人が、夜中に車が二度ほど揺れたので、何かなと思い、朝に車の周囲を見たら、クマの足跡と、車のガラスにクマの手“足かな”の跡かくっきり付いていたそうである。「くわばら、くわばら」

帰りに、知内の「こもれび温泉」で一汗流し帰宅。



咲いていた花
シラネアオイ、ミヤマキンバイ、ミヤマアズマギク、ハクサンイチゲ


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